体育祭

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戻ってみると教室が夕日の色で 覆われていた。 机も椅子も床も壁も黒板も 全部オレンジに包まれてる。 綺麗だなあ、と思った。 これだけ染まるなら、 夕焼けもさぞかし 綺麗なんだろうとも思った。 教室の窓から見える景色は茜。 遠くに行けば行くほど濃くなっていく。 ずっとずっと先の 地平線の線上、消失点に当たる場所に 太陽が鎮座している。 それは私のノスタルジックを刺激した。 少しでも近くで見ようと、 近くにあった椅子をガタガタと引きずり 上履きを脱いで椅子に乗る。 開けた窓の枠に立つ。 背の高い窓は私の身長なんかでは 上に掴める所がなく て横の縁掴むのが唯一の場所だった。 この多少の出っぱりが 私の命を繋いでいる。 指先に神経を集中させるだけで 心拍数が上がるのを感じる。 『この指先が便り…』 心拍数が上がるのは、 きっと不安のせい。 死と隣り合わせの状況に緊張し、 死を恐怖している。 死んだら、どうなるのか分からない。 その知らない未来に 不安を感じているのだと、思う。 知らない未来、先の無い未来に、 それはきっと私が苦しくて痛いだけで 終わる。 落ちてから地面につくまで、 最後まで分からない事に恐怖して、 着いた直後は 感じた痛みに安堵すら感じて、 時期に意識が揺らいでいく。 努力も悲しみも、 嫌われることもない楽そうな未来。 私は時々こんな風になる。 頑張って生きるより、 死んだ方が楽かもしれない。 勉強をして苦労して大学に進むより 首つって死んだ方が一瞬で済む。 努力して好きな人を振り向かせるより、 手首を切って死んで楽になる。 そうすれば成績が伸びないことを 悩まずに済むし、学費はかからないし、好きな人のことを考えて 胸が痛くなることもない。 私がいなくても世界は回るよ。 そして、今この状況みたいに死は近い。 って言っても、 いつも恐怖に負けちゃうんだけどね。 靴下越しの冷たいアルミサッシを しっかり踏んで、片足を戻そうとする。 慎重に、慎重に。 「まって」 叫び声が聞こえる。 ガラガラと閉めたはずの教室の扉を 開き誰かが入ってきた。 その人を見るために振り向いた。 振り向いたら足が滑った。
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