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春。それは旅立ちの季節だろう。
卒業という旅立ち、入学というまだ見ぬ場所への旅立ち等、様々だろう。
そして僕は今、卒業という旅立ちを終えた。
だけど僕の旅立ちはまだ終わらない。
僕の目の前に、純潔な女の子が歩いてくる。
あの子は遠い学校へ行ってしまうから、ここで会うのが最後だ。
だから僕は、あの子に思いを伝えようと思う。
純潔な女の子が僕の横を通り過ぎた。
「あの…!」
純潔な女の子が振り向いた。
その瞬間。
「おい、どうした?行くぞ」
僕以外の、違う男の声が聞こえた。
「どうかしたの?」
純潔な女の子が声をかけてくれた。しかし僕は。
「…いえ、卒業おめでとうございます…」
「ええ。貴方も、おめでとう」
そう言って、純潔な女の子と男は歩いていった。
風が吹きかける。
「うわ!」
僕が手で顔を防ぐ。その手には、散った桜の花びらが。
「…」
僕は思った。今のこの気持ちは、まるで桜の花びらのようだ。
桜は、三月から四月の間に咲き、そして散っていく。長い時間をかけて咲かせたこの恋心も、実らなければあっという間に散ってしまう。
「恋って、そんなもんなのかな…」
そう呟いた僕は、校門へ歩いていった。
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