新たな日常の幕開けです。

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「……はぁ~………」 普通科校舎の学園長室の高級な椅子に腰かけて、大きなため息を吐く女性が一人。 背後の窓から射す日の光で室内は暑く、彼女の背中にも直で当たっているため、彼女……学園長の額にはうっすらと汗が滲んでいる。 夏休みも終わり新学期へ突入したが真夏のような暑さはまだしばらく続きそうだ。 そんな真夏日和な今日この頃、学園長は2つの書類をデスクに並べて再びため息を溢した。 「なんでこう次から次へと問題が出てくるかなぁ」 憎々しげに書類を睨んでぼそりと呟く。 先日学園から連れ去られた生徒の件もちゃんと解決した訳ではない。生徒が連れ去られた理由が明らかになっておらず、いつまた同じようなことが起こるかヒヤヒヤしているというのに、こんなときに限って別の問題が浮上してしまった。 いや、浮上してしまったというのは少し違う。この問題は以前から保留していたのだ。だが、それに加えて別の問題が舞い込んできた。 保留し続けるのもこれが限界だと悟り、諦め半分でそれらを受け入れてしまった。 「……あの子、大丈夫かな。暴走しなきゃいいけど」 頬杖をつき、彼女にしては珍しく真剣な声色で心配の言葉を並べた。 右の書類の左上に写っている写真の中の、何を考えてるのか分からない死んだような瞳が特徴な彼を一瞥する。この男はまだいい。最近仕事量を減らした彼の様子見、もしくは監視役だろう。 だがずっと前から机の引き出しの中に眠っていた左の書類に写っている女が問題だ。 右の書類の彼と同じく黒髪で綺麗に切り揃えられていて、あの女子生徒と同様で長い。顔写真なのでハッキリとは分からないが、きっと腰までのびているのだろう。 彼女とそっくりなつり目に色白な肌。あの女子生徒と違うのは瞳の色くらいだ。彼女が紫色なのに対し、この女の瞳は淡い空色。 それほど、なにもかもそっくりなのだ。 「山本先生が産休、辻先生が親の危篤で帰省……タイミング悪すぎだよー」 教員の欠員を埋めるために彼らを採用するしか道はなかった。
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