崩れゆく日常

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 瑠璃香から貰ったプレゼントの箱を開けて、ミラクルスターの闇と思わしき事実を知って一夜が明けた。まだ、それが真実だとはにわかに信じがたい。 「ちょっと! 君、待ちなさい!」  昨夜の紙の束に書いてあった内容を反芻しながら登校していると、途中で警察官に呼び止められた。 「えっと……何ですか?」  尚も険しい表情で俺を睨む警察官に少し恐怖を感じた。 「いいから、来なさい!」  力強く腕を掴まれ、警察官に無理矢理引っ張られる。あまりにも突然で、反射的に引っ張られる力に抵抗してしまった。すると、いとも簡単に警察官が俺の方へと引っ張られ、バランスを崩して前のめりに倒れ込む。 「やはり…………なのか」  倒れる最中に警察官が何かを呟いたのが聞こえた。警察官はうつぶせに倒れたまま動かない。しかし、ボソッと何かを発したのは聞こえたのだ。そんな警察官の呟きをはっきりと聞き取る余裕など無く、周りの異変に、鈍感な俺でも流石に気づく。  道行く人。登校中の同じ制服の学生や、スーツのサラリーマン、散歩中のお婆さんまで、全ての人という人が動きを止め、全員が虚ろな目で俺を見ている。 「な……なんだっていうんだよ……」  ユラリユラリと動きながら、ゆっくりと俺に向かって来る人々。見知った顔も、知らない人も、焦点が合ってない目で明らかに様子がおかしい。  いや、そんな悠長なことを考えている場合じゃない。  逃げなきゃ……!  そう思ったのも束の間、足首に強烈な痛みが襲った。
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