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クソ……がぁ!!
「あああぁぁぁぁっ!」
雄叫びを上げ、俺を取り囲む人の群れに突っ込む。ぶつかる度に、クッキーの様に砕ける人々。完全にヤケになっていた。
千切っては投げ、千切っては投げ、俺の体は返り血で赤く、赤く染まっていく。それでも、際限なく溢れる人。中には学校の友人や先生、行きつけのコンビニの店員さんや、よく使うバスの運転士さん。知った顔もいる。だが、知ったことか。
「いち……兄ちゃん……」
ふと、聞き慣れた声がして我に返る。無我夢中で俺に向かって来る全てを薙ぎ倒していた。たった今、俺が体を千切った相手。他でもない、佳絵だった。
ブツンと何かが弾ける音がした。今までも、理性などほとんど感じられないほどヤケになっていたが、欠片だけ残っていた理性の残滓が吹き飛んだ音だろう。
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