崩れゆく日常

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「おーす。今日学校終わったらカラオケ行こうぜー」  俺はいつものように仲の良い友人に声を掛けた。ほとんどが高校で知り合った奴らだが、2年近く一緒にいればあまりにも馬が合わない奴でなければ大抵は仲良くなれる。  しかし、最近こうして声を掛けても、皆すべからく付き合いが悪いというか…… 「わり! 今日はミラクルスターの放送があるからまた今度な!」  そう、このミラクルスターというヒーロー番組に何故か皆夢中なんだ。  何が面白いのか分からない。だが、子どもだけでなく大人まで、俺以外の全てが見ている、もしくは見たことがあると言っても過言では無い。もはや社会現象にすらなっている。  俺はというと……流行に乗り遅れたのもあるが、正義は必ず勝つとか、そういうのが嫌いで一切見たことがない。毎週月、水、金と土日の5回、しかも何故か朝と夜に1日2回放送するという異例の番組にも関わらず……だ。ミラクルスターの顔も色も知らない。 「ちっ、しょうがねぇな。じゃあ明日、カラオケ行こうぜ!」 「あぁ、明日なら全然いいぜ! 約束な!」  そう言って足早に教室を後にする友人の後ろ姿を見送って、世界に独り取り残されたような空しさに包まれた。  ミラクルスター……何だってんだ。
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