崩れゆく日常

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 コロン、という音を立てて箱からこぼれ落ちたのは、20円くらいで買えそうな小さなチョコレート。ホールケーキが入っていそうな程のこの箱には、あまりにも不釣り合いだ。  それと、中には何かのアニメのDVDと思える物が入っていた。見たことのないキャラクター。しかし、キャラクターに被せるように大きく書かれたタイトルには嫌と言うほど見覚えがある。  ミラクルスター  そう、書かれていた。  どういうことだ? 瑠璃香もミラクルスターが大好きで、好きすぎてバレンタインのチョコと一緒に俺にプレゼントしてくれた? 肝心なチョコレートは1個20円なのに?  いや、ここにきてそんなオチは無いだろう。とりあえずDVDのケースを開いてみた。すると、出てきた物は丸い円盤などではなく、もっとアナログな紙切れだった。  手紙かな? それにしても、文字数が多い。丁寧に折りたたんである紙を開くと、A4程のサイズになった。そこにびっしりと小さな字が並べられている。パソコンで打ったのだろう、文字のサイズは全て一律で、フォントは6くらいか……ここまで小さな文字が所狭しと並んでいると、正直読むのもためらってしまう。ガサッと音がしたので紙の端に力を込めてずらしてみると、同じ様に何かが書かれた紙がさらに3枚ほど連なっていた。  緊張からか、手が汗で湿っており、小刻みに震えていて小さな文字を読むには鬱陶しい。俺は紙の束と床に落ちた小さなチョコレートを拾うと、椅子に座って紙とチョコレートを机に置いた。  深呼吸をして心を落ち着かせ、紙面に目を通す。そこには、信じられない事が書かれていた。
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