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そういや、ウチが虐めに逢う度に助けてくれたな。
ある時は鉄パイプがウチを避けて落下した。
またある時は明らかに早いと分かるタイミングでチャイムが。
そのまたある時は虐めっ子の背中にある窓ガラスだけが割れた。
最初は偶然だと思った。
だけど、それはウチが虐めに遭った時だけにしか起こらない。さっきだってそう…
この桜の木は、暖かくならねーと咲かないんだ。
まだ花びら一つついてねーっつうのに。
ウチは知ってる。
「ケイ!わりぃ…長引いてしまって…どした?」
桜の木を眺めるウチの顔を夏兎の顔が覗き込む。
恥ずかしくなって目線をそらしてバッグを肩に担いだ。
「なーんでもねぇよ。」
「何だよ、それ。」
ウチらのやり取りを、見守ってくれてる気がした。
ウチは知ってる。
ウチを護ってくれたのは、“桜の木”じゃない。
ウチが小学生の時に亡くなった、母ちゃんだ、と言う事を…
(終)
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