6.未来永劫

7/7
前へ
/24ページ
次へ
 夜、和成は居室の庭の外れで月を見上げていた。  紗也への想いに気付いた時、この場所で紗也と月を見上げた。あの時紗也のいた場所に、今は自分が立っている。  あの時は想いが消えてなくなる事を願っていた。想いは消えるどころか日増しに膨らみ、今も自分の心を捕らえて離さない。  紗也への想いを思い出にしてしまえたなら、自分も月海も幸せになれたのかもしれない。  だが、和成は紗也への想いが消えない事を不幸だとは思った事がない。紗也への想いは、今でも心を暖め、幸せな気分にさせる。  かつて自分が月に願ったのだ。この幸せな魔法が解けないようにと。  紗也の存命中に贈る事のできなかった言葉。言葉が天に届くなら、毎日紗也に贈りたい。  和成は月を見上げて微笑むと、天に向かって言葉を贈る。 「愛しています」  今も、これからも、未来永劫――。 (完)
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加