4.夜の不思議

2/4
前へ
/24ページ
次へ
 月海はどう反応していいかわからず笑顔を引きつらせる。 「あ、でも、おやじ臭くはないですよ。和成様お若いですし……」  月海が慌てて取り繕うと、和成は意外そうに目を見開いた。 「もしかして……私の年、聞いてない?」 「はい?」  月海はキョトンと首を傾げる。  和成は軽く嘆息すると、少年のような顔に苦笑を湛えて、月海にはにわかに信じ難いことを告げた。 「こう見えても私は三十九才なんだ。今年で四十になる立派なおやじだよ」  月海は思い切り目を見開いて絶句すると、しばらくの間和成の顔を凝視した後、大声を上げた。 「えぇ?! 本当ですか?! 私より十七才も年上?! 全然見えません!」 「私もそう思うよ」  そう言って少し天井を見上げた和成を見つめて、月海はやはり信じられずにいた。  和成の見た目はどう見ても十七、八の少年にしか見えない。けれど塔矢隊の先輩たちの様子から見て、年上だろうとは思っていたが、三十には届いていないと踏んでいた。  どこかに年齢を感じさせるところはないかと観察してみるが、肌も髪もうらやましいくらいに色艶がよく若々しい。それに昨日の太刀さばきも身のこなしも、実戦から遠ざかって久しいとは思えないほど見事だった。  あまりに不躾にじろじろと見ていたらしく、和成が照れくさそうに顔を背けた。 「若い女の子に、そんなに見つめられたら照れるね」  月海はハッとして視線を外すと頭を下げた。 「し、失礼いたしました」 「おいで、月海。侍従たちに紹介しよう」  顔を上げると、渡り廊下の手前で和成が笑いながら手招いていた。  初めて和成に名前を呼ばれ、心が弾んだ。 「はい!」  月海はうきうきした気分のまま元気に返事をすると、和成に駆け寄った。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加