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月海はどう反応していいかわからず笑顔を引きつらせる。
「あ、でも、おやじ臭くはないですよ。和成様お若いですし……」
月海が慌てて取り繕うと、和成は意外そうに目を見開いた。
「もしかして……私の年、聞いてない?」
「はい?」
月海はキョトンと首を傾げる。
和成は軽く嘆息すると、少年のような顔に苦笑を湛えて、月海にはにわかに信じ難いことを告げた。
「こう見えても私は三十九才なんだ。今年で四十になる立派なおやじだよ」
月海は思い切り目を見開いて絶句すると、しばらくの間和成の顔を凝視した後、大声を上げた。
「えぇ?! 本当ですか?! 私より十七才も年上?! 全然見えません!」
「私もそう思うよ」
そう言って少し天井を見上げた和成を見つめて、月海はやはり信じられずにいた。
和成の見た目はどう見ても十七、八の少年にしか見えない。けれど塔矢隊の先輩たちの様子から見て、年上だろうとは思っていたが、三十には届いていないと踏んでいた。
どこかに年齢を感じさせるところはないかと観察してみるが、肌も髪もうらやましいくらいに色艶がよく若々しい。それに昨日の太刀さばきも身のこなしも、実戦から遠ざかって久しいとは思えないほど見事だった。
あまりに不躾にじろじろと見ていたらしく、和成が照れくさそうに顔を背けた。
「若い女の子に、そんなに見つめられたら照れるね」
月海はハッとして視線を外すと頭を下げた。
「し、失礼いたしました」
「おいで、月海。侍従たちに紹介しよう」
顔を上げると、渡り廊下の手前で和成が笑いながら手招いていた。
初めて和成に名前を呼ばれ、心が弾んだ。
「はい!」
月海はうきうきした気分のまま元気に返事をすると、和成に駆け寄った。
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