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その夜月海は、布団の中でゴロゴロといつまでも眠れずにいた。枕が変わったこともあるが、今自分のいる部屋に昨日まで和成がいたかと思うと、なんだかドキドキして目が冴えてしまったのだ。
和成が自分よりも自分の親に年齢が近いのにも驚いた。
頭の中で自分の父親と和成を並べて比べてみる。そして、クスリと笑った。
「全然お父さんには見えない。だって、和成様は頭がよくて、強くて、男前で、お父さんより断然かっこいいもの」
気がつけば和成のことばかり考えていた。
自分の名を呼ぶ和成の声を思い浮かべる。和成に呼ばれると自分の名前が甘い響きを奏でるような気がした。
頭の中で和成の声を繰り返し再生するたびに、心が弾み自然に顔がにやけてきた。
頭の中で響く声に応えるようにその名を呼ぶ。
『月海』
「和成様……へへっ」
益々顔がにやける。
『月海』
「うふふ……和成様」
名前を呼ぶたび、気持ちが舞い上がりそうになる。
『月海』
「か・ず・な・り・さ・ま……きゃああ」
照れくさいのか、嬉しいのか、楽しいのか、よくわからない。それらがごちゃ混ぜになった不思議な感情が極限に達して、月海はじっとしていられなくなり、布団を抱きしめて寝台の上を転げ回った。
しばし後、布団をはねのけて勢いよく身体を起こすと、冷めた自分がポツリと呟いた。
「……私、バカ?」
月海はため息と共に寝台を下りると、上着を羽織って廊下へ出た。
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