5.昼の不思議

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 そう言って俯いた月海の頭を塔矢はコツンと叩いた。 「こら。おまえが切なくなってるんじゃないだろうな」  塔矢に指摘され、月海は俯いたまま、みるみる顔を赤くした。その様子が紗也への想いに気付いた時の和成にあまりにも酷似していて、塔矢は思わず額に手を当て目を閉じると、空を仰いだ。 「……ったく。俺の選ぶ護衛ときたら、どいつもこいつも想ってもしょうがない相手にばかり惚れる」  塔矢の言葉をもっともだと思いつつも、月海は俯いたまま力なく反論する。 「身分違いなのはわかっています。あの方に応えてもらおうとは思っていません。でも、私が勝手に想いを寄せるのは自由でしょう?」  塔矢は苛々したように月海を諭す。 「身分をとやかく言ってるんじゃない。さっき言っただろう。あいつは今も紗也様以外の女は眼中にないんだ」  無意識のうちに塔矢が和成をあいつ呼ばわりしている。素に戻っているということは、それだけ月海を心配しているのだろう。  塔矢は月海を見つめて厳しく言い放った。 「断言してもいい。あいつがおまえに振り向くことは絶対にない。傷が浅いうちに見切りを付けろ」  月海はムッとして立ち上がった。そこまできっぱり断言されるとかえって闘志が湧いてくる。  本当は密かに想っていようと考えていたが、白黒付けてみたくなった。  月海は塔矢をまっすぐ見つめて宣言した。 「わかりました。塔矢殿が言う事が本当かどうか自分で確かめます」  塔矢はひるむことなく、不敵の笑みを浮かべて月海を見つめ返した。 「いいだろう。あいつがおまえの想いに応えたなら、裸で逆立ちしてやる」  月海はガックリ肩を落とすと呟いた。 「……見たくないから、それはいいです」
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