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「……あぁ、そう……」
和成が呆気にとられて、ふと月海の後ろに視線を移すと、塔矢が一生懸命笑いをこらえていた。
なんとなくわかった。塔矢が月海を引き合わせた理由が。
月海は、紗也と初めて会った頃の和成によく似ているのだ。
塔矢と月海から目を逸らして、大きくため息をついた和成を見て、月海が食ってかかった。
「私の腕をお疑いでしたら、お手合わせ願います」
和成は驚いて月海を見つめる。頬を紅潮させて睨みつけていた。どうやら、和成のため息を小馬鹿にされたと勘違いしたらしい。
「控えろ、月海」
塔矢が諫めるのを和成は片手で制した。
「いいよ。真剣勝負といこう」
「え? 真剣ですか?」
月海が少しためらうような表情を見せた。和成は少し意地悪な笑みを浮かべて月海を見つめる。
「何か不都合でも? まさか、人を斬った事がないなんて言わないよね? 人を斬れない護衛はいらないよ」
和成の言葉に月海は再び食ってかかる。
「私は塔矢殿の前線部隊所属です。人が斬れなかったら、今ここにおりません。君主様がお怪我をなさってはと、ご心配申し上げただけです」
「ご心配ありがとう。でも、無用だけどね。私は結構強いよ」
静かに見下ろす和成を、月海はムッとした表情で見上げた。
「かしこまりました。真剣でお願いいたします。用意して参りますので、道場にてお待ち頂けますか」
「承知した」
和成の承諾を聞いて、月海は一礼すると執務室を出て行った。
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