2.鏡の中の女の子

3/3

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 月海を見送った後、塔矢がクスクスと笑い始めた。そして、和成を横目で見つめて言う。 「鏡を見ているようだろう」  和成も目を細くして横目で塔矢を見る。 「……確かに、おもしろい奴ですね」 「確かめなくても、あいつの腕はかなりなものだぞ」 「彼女の腕を疑ってはいません。塔矢殿の人選ですし」  壁に掛けられていた刀を取って腰に差す和成を見ながら、塔矢はおもしろそうに笑った。 「何を考えている?」  和成は振り返ると、逆に問い返した。 「今の塔矢隊で、彼女に勝てる人はどのくらいいますか?」  塔矢は少し考えて答える。 「古参の隊員が四、五人ってとこかな」  それを聞いて和成は納得して笑いながら何度も頷いた。 「そうじゃないかと思いました。”男にまけるもんか”って全身から滲みだしてますしね。まぁ、その実力だと、私にも勝算はあるかな」 「負けるつもりないだろう」  塔矢はニヤリと笑いながら和成の肩を小突いた。 「ええ。だから真剣勝負にしたんですよ。慣れてないと緊張しますからね。その分私は有利になります」  和成は昔から稽古の時もほとんど真剣を使っていた。人を斬るのが嫌いな和成は戦場でためらわないように、稽古と実戦の感覚の差を減らすためそうしていたのだ。 「ずっと勝ち続けていると、負けるわけにはいかない気分になってきますからね。それで肩に力が入ってるのかなと思って。ちょっと力を抜いた方が、周りが見えてきて彼女のためにもいいんじゃないかと」 「おまえも昔は周りが見えてなかったな」 「そうですね。だから、彼女の肩の力を抜いてあげたいんです。立ち会いお願いします」 「わかった」  二人は執務室を出て道場へ向かう。時間は午後二時になろうとしていた。塔矢隊の稽古の時間である。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加