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「素敵ですね。」
話を全て聞き終えてから彼女は言った。
「そんなふうに思えるなんて素晴らしいと思います。」
お世辞ではないと願いたいものだ。
「そうですか?いつもは変わってるね、と言われるのですよ。」
苦笑いして僕は言った。
「梅がお好きなのですか?」
「いや、儚いものが好きでしてね。」
理由はちょっと話せないけど、と、心の中で付け足した。
「そうですか。儚いといえば……」
彼女は少し考えてこんでから、ふっと笑って言った。
「桜。桜なんてどうですか?桜吹雪、私好きなんです。綺麗だけど切なくて。」
「ああ、わかります。儚くて美しいですよね。桜の季節には河川敷によく見に行くものです。」
「私もですよ。」
彼女は嬉しそうに答えた。春風のような微笑みは、太陽のような笑顔となっていた。
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