梅の香

7/8
前へ
/8ページ
次へ
「素敵ですね。」 話を全て聞き終えてから彼女は言った。 「そんなふうに思えるなんて素晴らしいと思います。」 お世辞ではないと願いたいものだ。 「そうですか?いつもは変わってるね、と言われるのですよ。」 苦笑いして僕は言った。 「梅がお好きなのですか?」 「いや、儚いものが好きでしてね。」 理由はちょっと話せないけど、と、心の中で付け足した。 「そうですか。儚いといえば……」 彼女は少し考えてこんでから、ふっと笑って言った。 「桜。桜なんてどうですか?桜吹雪、私好きなんです。綺麗だけど切なくて。」 「ああ、わかります。儚くて美しいですよね。桜の季節には河川敷によく見に行くものです。」 「私もですよ。」 彼女は嬉しそうに答えた。春風のような微笑みは、太陽のような笑顔となっていた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加