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「あら、いけない。もう行かなくっちゃ。」
「どこか行かれるのですか?」
「ええ、仕事に。勤務時間が不規則なもので。」
「それは大変ですね。僕も夜勤なのでその大変さが少しわかりますよ。」
お互い顔を見合わせて笑った。
「そうだ。」
彼女ははっとして言った。
「お名前、聞いていませんでした。」
「そうでしたね。」
さて、どう名乗るべきか。
「私はハルカです。三宅遥華。」
遥華さんか。
「僕はカルです。えっと、以後お見知りおきを、と言ったところですかね。」
そう言って僕は笑った。うまく笑えたかどうかはわからないけど。
当たり前かもしれないけど、遥華さんは不思議そうに首を傾げた。
「カル…さん?本名ですか?」
「どう捉えてもらっても構いません。僕のことはカルとだけ覚えておいてください。」
「分かりました、カルさん。では。」
「はい、また。桜吹雪を一緒に見ましょう。」
最後の言葉は自分でもびっくりするほどすらすらと出てきた。一緒に見ましょう、だなんて僕らしくないな。
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