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「ねー、君ひとり?」
突然、背後から聞き覚えのない男の声。
「誰か待ってる? ……ワケないよね、こんな所で」
一方的に結論付けて、軽薄そうな声が続く。
同年代くらいの少年だろうか。
何の反応も示さず、黙って少女は下方の樹々に視線を落としている。
「それってさァ、S女子校の制服だよねもしかして。頭イイんだねー」
沈黙をどう受け取ったのか、男はひたすら喋り続けることにしたらしい。
「オレはさぁ、R高校なんだけどー」
「……これ、聞こえる?」
ポツリと、少女の口から消え入りそうな声が漏れた。
「え?」
ようやく発せられた声を耳ざとく聞きつけ、何?何?と、男ははしゃぐようにすぐ隣に駆け寄ってくる。
「これ、って?」
「…………」
聞こえていないのだ、彼にも。
当然だ。
わかるはずなどない。こんな感覚。
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