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 それ以来、心は――人間に対する心は――閉ざされたままだ。  本当の自分で接する意味なんかないのだと、いつの間にか、事ある毎に自分に言い聞かせて。  寂しくないと言えば嘘になる。  けれど、どうせわかってもらえることなど、ありはしないのだから。    本当に信じてほしいことを信じてもらえずに、他に自分の何をわかってほしいと思えるだろう。  見えるものしか見ようとはせず、聞こえるものにのみ耳を傾けようとする。  自分の感覚だけがすべて。それが人間。  そんな彼らに心から打ち解けることをせず、独りこうしている自分もまた、確かに『人間』なのだけれど。 「私に、何かしてほしいの?」  そよぐ植物。  羽ばたく鳥。  よく晴れた日の渡る風さえ、不快を露わにした悲しみに満ちているような気がして。  いつもいつも、心に薄暗い影を落とした。
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