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 薄いフィルムで全身を隙間なく覆われてしまったように、感じ取れるもの全てがどんよりとしたものに包まれていた。  そして、聞こえてくるこの感覚。  不安のような怒りのような、諦めにも似た感情。  ……いや、もっと……  雑多な日常音に紛れる微かな声を拾おうと、目を閉じてさらに耳を傾ける。   共に流れこんでくるのは、わずかな……望み?  ――願っている?  何を?  わからない。  違うかもしれない。  一瞬、感覚の端に捉えたような気にはなるものの、いつもそこまでだ。 「どうしてほしいの……?」  言いながら胸が痛むのは、こんな自分では何もしてあげられないから。  何もできない自分は、彼らの想いをただ無駄に聞いているに過ぎないのではないかと……。
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