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そう、つまり大谷睦月は実は生物学的には「女」であり――。
出生届の手続きの際にあわてふためいて性別を間違えてしまったと言い張る父親の尻拭いとして、健気に(?)男のフリを続けている親孝行な娘なのである……。
「そうだなあ。困るなあ」
取って付けたような台詞を飄々と宣う布団の上の住人に、ピキッとこめかみが引きつる。
「……実はそんなに困ってねーだろ?」
「いや、何とかなるのではないかと……」
その口調と表情のあまりの悠長さに、若干の目眩。
真面目に父の頭に土星の輪が見えた……ような気がした。
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