1. 兆し

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 『何代か前の先祖が外国人だったとか?』と考えたこともある。 が、柾貴の話では、知る限りにおいてはどうもそういった系の事実はないらしい。  ないならないで仕方がないが、あの父親――  例によって「いや、すまぬ」「仕方あるまい」「何とかなる」などとほざき、のほほんと構えているのはどういうことだ。  製造元のクセにあの言い草……。  何ともムカつく話ではあるが、実際それだけならこれほど神経を尖らせる必要はなかったかもしれない。  本来ならば。 (だって、この髪ときたら……)  フンと音まで付きそうなため息が、ついもれ出てしまっていた。  なぜか――ショートヘアから伸びないばかりではなく(いや伸びないのはいい、伸びないのは。切る手間も省けるし!)、よほど色付けされるのが嫌なのか、何度染めてもどう染めても一日経つとすっかり銀色の輝きが戻ってしまうのだ。
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