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第三次世界大戦後の近未来の学園都市。
校内球技大会の午後。
高等部の1年G組はバレーボールで決勝戦に勝ち進んでいた。総合優勝をかけて校庭に集まった生徒達や家族が盛り上がる。
「リュート、頑張れ~!!」
ひときわ大きなだみ声はリュートの父…学園都市だけあって研究室勤務が多い他の父兄と違い一昔前の職人気質で実年齢よりも言動がオヤジ臭い。それでもリュート自慢の父だ。
「お兄ちゃん」
「がんばれえ~」
こちらのに可愛い声援は妹で小学生のアスミ、弟で幼稚園児のタクヤだ。リュートは手を振った――いいとこ見せなくちゃな!
「リュート、ユウキが助っ人に入れることになった。お前、アウトな」
試合直前、キャプテンのダイゴにそう告げられた。
「ええ――」
やっぱりこんなオチか。
どうせ自分は何をやっても「そこそこ」……できて当たり前、できても注目すらされないその他大勢の一人。
もし成績優秀、運動神経抜群の学年のスター、ユウキみたいだったらどんな人生だったかな……
リュートのいないゲームはユウキの活躍でフルセットのマッチポイントまでもつれ込んだ。
絶好のトス。相手チームのブロックの裏ををかいて、ユウキの渾身のアタック――誰も気づかないがリュートの目には瞬時に、その軌道と誰も拾えそうにない落下点が見えていた。
「よーっしゃ!!」
気持ちフライング気味のリュートの声援にやや遅れて、観客席が沸く。
輝くような秋空の澄んだ青が歪んだ。空気を震わす不快で、不吉な振動…神経という神経に鋲を刺すような痛み。リュートは思わずうめき声をあげてうずくまった。
「リュート?」
同じくベンチ要員だった親友のソータが声をかけた。
「いつもの頭痛か?大丈夫?」
リュートは頷く代わりに片手を上げた――よりによってこんな時に……
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