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「魔王に近づく人間は、魔力を奪われ死ぬのではないのですか。」
副会長様は呆然とした様子で言った。
魔王という存在はもはや言い伝えの中でしか分からず、一般的に知られている言い伝えがソレだ。
いきなり現れて魔王などとは信じがたいのだろう。
「魔力は奪われますけど、死にはしないですよ。
結果的に俺は魔法が使えませんがね。」
そのあたりは学校側の理解もあり、魔法のテストは免除されてはいる。
しかし、この情報はごく一部しか知らないのだ。
「魔王が夫なんてウソだっ!!春に脅されてんだろっ!?サイテーだぞっ!!!
魔王は俺のモノなのにっ!!!」
たかが人間に魔王が脅されるワケがないだろうに、気が狂ったように目を血走らせて、茉莉(藻)は春に襲いかかってきた。
「煩わしい、パリカーに呪い憑かれたか。ニンゲン共に飽きたらず魔王までも誘惑しようとは
なんと浅ましい、身の程知らずめ...」
魔王は春を片手で抱き上げ、茉莉(藻)からの攻撃を避けた。そして会長様と同じように茉莉(藻)を地面に押さえつけた。
「汝と契約せしモノよ、姿を現せっ!!!」
あ、これは完全に怒ってるわ。
春はのんきにそう感じていた。
そして地面にへばりつく茉莉(藻)の背中から透けた魔女があらわれる。
「美シイニンゲンモ魔王サマモ、皆ワタシノモノ!!!許サナイ!!春!!許サナイッ!!」
茉莉(藻)と同じように血走らせた目で春を睨み付けて金切り声で叫ぶ。
思わず怖くなって魔王に抱きついた。
「契りの言の葉よ、消え去れ!!」
黒い渦がパリカーを飲み込んでゆく。
魔王は茉莉(藻)の使い魔であるパリカーとの契約を強制破棄したのだ。
「オノレェッ!!春ゥッ!!呪ッテヤルっ!!
呪ッテヤルゾォォォッッッ!!!」
パリカーはそう叫んで消えてしまった。
呪われたらどうしよう...。
春は震えながら魔王を見上げた。
魔王は安心させるよう春を撫でる。
「呪いは厄介だ。呪われていないか確認のため
魔界へ帰るぞ。」
春は魔王の言葉に頷き、身をゆだねた。
「忙しいからお前らは不問にしてやるニンゲン共め。しかし、次はないことを覚えておけ。」
魔王と春は消え去り、取り巻きたちは魔王に睨まれ恐怖で腰を抜かしていた。
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