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魔法が使えないけど、この学園でトップの成績をほこる特待生の黒瀬 春(クロセ ハル)くんは非常に困っていた。
「何ですか、その顔は。茉莉(マリ)に好かれているからって調子にのって!魔力もない庶民のくせに汚らわしい!」
季節外れの転校生に惚れた副会長様に
人気のないところへ連行されて罵詈雑言の嵐を浴びているからだ。
そもそも転校生である姫川 茉莉(藻)に好かれても全く嬉しくないのだが...。
とりまき生徒会はそんなことは聞く耳もたず、自分よりも俺を目にうつす事実が問題らしい。
まあ、庶民で平凡な俺に成績負けてることにコンプレックスを感じていることも要因かな。
ハア...。
あんまり二人きりという状況は良くないのだが..。
バシンッ
話を聞き流してたら平手打ちされた。
痛い。
「ご自分がどういう状況かお分かりでないようですね?まあ、私が手をだすまでもないでしょう。
あなたは魔法が使えないクズですから」
副会長は冷徹な微笑を浮かべて手のひらを地面に向け腕を水平にのばした。
「...我が呼び声に共鳴せん!『フェンリル』!!」
地面に魔方陣が描かれる。
使い魔を召喚するようだ。
灰狼なんて戯れでも腕一本で済むか分からない獰猛な妖獣を使役するなんて副会長様の優秀さが伺える。
いいなぁ、フェンリルってふわふわの体毛で
お日さまと爽やかなハーブの匂いが魅力的なんだよなぁ。
「命令だ、コイツを痛めつけなさい!」
召喚されたフェンリルは俺を目に写した瞬間に目を見開いた。うん、なんかごめんね。
『ナント愚カナ...。カノ方を傷ツケルナドトハ...』
フェンリルは嘆き主人を返り見た。
まあ、一応さ俺は魔力のない庶民って認識だからほとんどが知らないんだよ。
『申シ訳ナイ。愚カナ主ニカワリ詫ビヲスル。』
気にしないで。君は悪くない。
本当は副会長様も悪くはないんだ。
「何をぼんやりしている!?フェンリル!!」
ああ、副会長様は心の会話は出来ないのか。
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