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『愚カナ主ヨ!命ガイクツアッテモ足リヌゾ!』
フェンリルが俺に危害を加えないのは、
主である副会長様を守る最善の策だ。
しかし、これではフェンリルがかわいそうだ。
想いが通じぬ歯がゆさが伝わってくる。
「...ごめんね。フェンリル、さあ『カエリナサイ』」
俺はフェンリルの額に還り(カエリ)のキスをする。
俺に唯一『許された』強制送還の魔法だ。
と言ってもおまじないのようなものだが。
フェンリルは消え去り、副会長様は唖然としていた。
「...アナタ、何をしたのですか」
魔法は使えないのではないのか。
そう言いたそうだ。
「何をしたのでしょうね。キスしたら消えてしまいましたね?」
まあ、頭のいい副会長様だから考えないと。
ピリリリリ
おっと、いけない。電話だ。魔法を使ったらバレてしまったようだ。怒られちゃう。
「オイ!春!!聖(ひじり)!!」
うるさっ...!
あー、一番悪いタイミングで茉莉(藻)に見つかってしまったようだ。
電話に出ないといけないのに...。
「二人きりでなにしてんだよっ!!
俺を置いていくなんてサイテーだぞっ!!!」
「すみません茉莉...。」
副会長様は茉莉(藻)に駆け寄り抱き締めた。
そのまま気を引いてて欲しい。
そして出来れば声のトーン落としてくれないかな。
パッと音が鳴るスマホを取りだし
相手を確認して予想通りだと冷や汗をかいたときだった。
「オイ!春!!無視するな!!
俺が喋ってるのに、ケータイなんか見るなよ!!」
そういって茉莉(藻)は俺からスマホを奪いとり
地面に叩きつけた。
「平凡が俺様の茉莉を無視していいと思ってンのか?カスが!」
会長様はそう言って叩きつけられた俺のスマホを踏みつけた。
どうしよう、絶対壊れた....!
顔面蒼白になっている俺を見て会長様は鼻で笑い胸ぐらを掴んだ。
俺はそんなことよりも絶望フラグが秒読みであることのほうが恐ろしい。
もはや何も手段はない。震えて待つしかないのだ。
「この俺様が茉莉のためにコイツに土下座させてやるよ!」
会長様は俺の顔面めがけて右手の拳を振りかぶった。
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