チョコら手

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チョコら手

   気温と湿度を調整された部屋のショウケースには、彼女が作った数々のチョコレートが並んでいる。フルーツ、ナッツ、クッキー、プリッツ等が、ホワイト、ミルク、マイルド、ダークの四種類のチョコレートで覆われている。それらは、いかにも甘そうといった感じの物から、色の濃い、いかにも苦そうな物等で、、、でも、私のお目当ては、彼女が作るホットチョコレート、ココアではない。  私は月に二、三度、昼食の後、彼女の店を訪れる。その店には、二つのドアーが在り、一つ目は簡単に開くが、二つめは空気の管理が施されているので少し重い。そして、そのドアーが開くと同時に、”ピィッ、ピィッ” とゆう鳥の声を真似た呼び鈴が鳴り、甘くてスパイシーなチョコの香りに包まれる。  「そろそろ来る頃だと思った。」と彼女は、嬉しそうにニッコリと笑い、何時ものアステカ風のホットチョコレートを作り始める、その細長い指の白い手で。    三年位前だろうか、私の店のオープン当時からのカップルのお客さんの旦那さんが、突然失踪した、とゆうより、消えた。後に残されたのは、莫大な借金と、彼が彼女の家族から借りた借金。  家は、銀行に取られ、彼女には個人破綻しか取る道がなかった。 不思議な事は、彼女が依頼した興信所でさえも、何も探せなかった事。彼の出生届け、税金申告の為の番号、運転免許書、その他、彼を認知するための全てのデーターが消えていた。   一年程の月日が過ぎ、彼女の親友が私の店に現れた時、  「サリーが、あなたの店の近くに、チョコレートの専門店を開けるのよ、道を渡った直ぐそこだから、たまには、顔を出して上げてね。んん、彼女は、雇われ店長だけど、とても張り切ってるから。」と告げられたが、甘い物が苦手な私は、  「OK、出来るだけ顔を出してみる。」とだけ答えた。          
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