第一話
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「何をまごついておる?はようこっちに来ぬか」 夜、虫の音だけが微かに聞こえるような寝所にて、染み渡るように言葉が響く。 昂りを感じさせる、艶を帯びた女の声だ。 「何を躊躇うことがある。わし自身がよいと言っておるのじゃ」 雅やかな意匠を施した屏風、几帳に囲まれて、男と女が相対していた。 女は脇息に肘をかけゆったりとした姿勢でいる。その体躯は小柄で、幼さすら感じさせる。
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