終末にて -1-

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「たとえば」 唐突に愛妃が言った。僕は返事はしない。どうせ続けるだろう。 「たとえば、世界が終わったら、とかって。考えたこと、ある?」 「ない」 「そんなことないでしょ」 焼香の煙が揺れた。 「ないってば。僕は」 少し考えた、が。 「今を生きるので精一杯だよ」 「ふーん」 愛妃はこちらを見ていた。僕は今にも消えかかりそうな焼香を見つめている。 「じゃあ、今考えて」 「何を」 「今日世界が終わるとしたら、何がしたい?」 「うーん」 考えるふりをした。面倒だった。 「じゃあ、遊園地に行く、とか……」 なんでもなく、口からこぼれた言葉だった。 「よっしゃ」 「え」 手を引かれた。 「今からいこ」 「え、でも、時間」 時計はもう夕刻を指している。近くの遊園地まで行くにしても、電車で30分はかかる。 「いいの」 愛妃は僕の手を離さず、ベッドから立ち上がった。
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