罪は咲き誇り、散り急ぐ。

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「あら、久々にいいものを見たわ」 突然桜の木の、大地とは反対側の方から一人の少女が現れる。 「だ、誰だ?」 大地が情けなく上擦った声をあげると、少女はふうと微笑んで言った。 「桜の木の下で出会ったから、さくらとでも呼んで」 「そ、その、さくらさんは、何者なんですか?」 まさか桜の精だとは言わないよな、と思いながら大地が返答を待っていると、さくらはそのままの回答をしてより笑みをふかめた。 「まあ、正体についてはこれ以上探らないことにするよ。だけど、俺がここで殺人を誓ったことは誰にも言わないでくれよ」 「わかっているわ。私まで殺されたら嫌だもの。まさか、口封じなんてしないわよね?」 「し、しないよ。こんなかわいい子、殺せるわけないよ」 「あら、ありがとう。かわいいなんて言われたの、初めてよ」 「っつ」 大地は思わず赤面する。 「それより、いいの?はやく殺しの計画を実行しなくて。一週間なんて、あっと言う間よ。あなたみたいな甘いひとは、殺すことをためらっているうちにタイムリミットがきてしまうことだってあるかもしれない。そうしたら、あなたも標的の道連れで死んでしまうのよ?解ってる?」 「わ、解ってるよ」 「そう。じゃあ、頑張ってね」 微笑むさくらに背をむけ、大地は帰路につく。
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