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大地がもんもんとしていると、とんでもない光景が目にとびこんできた。
空人と美里が喫茶店でお茶をしていたのだ。
大地は怒りの炎を燃え上がらせ、憎しみを大きくした。
そして、二人にばれないように近くの席に陣取る。
「空人くん。私はあなたのことが好きなの。今日こそ認めてくれる?」
美里が問うと、空人は渋い顔をして言った。
「俺は君より大地の方が大事だ。あいつには何度助けられたかわからない。あいつだけは傷つけたくないんだ。もう十分傷つけてしまったかもしれないけれど。どうせ傷つけてしまったんだから、もとにはもどらないんだから、私と付き合ってよって君は言いたいんだろう?そんなやつと付き合いたいなんて思うやつがいるか?大地のやつは今はお前にお熱だが、すぐにさめるだろう」
「そうなったとしても、あなたと大地君の仲はもとにはもどらないわ。いいきみね」
「そうだな」
二人の会話をきき、大地は青ざめた。
どうして自分は、空人のことを信じてやれなかったのだろう。
目の前の恋に夢中になるあまり、大地は大事なことが見えなくなっていた。
空人に助けられてきたのは、大地も同じだった。
やっぱり空人を殺すことはできない――
大地はそう思ったが、もう遅いのかもしれないと思った。
桜の木の噂が本当なら、このままでは少なくとも一人が死ぬまでは事態はおさまらない。
自分が殺さなくても空人が桜の木に殺されてしまうなら、いっそ自らの手で、とも思った。
しかし、空人の本心を知った今、それは無理な話だった。
結局何もなせないまま一週間目の朝が来る。
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