愛おしい子へ

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―――――――――――― ―――――――― ―――― チャペルの閉ざされた扉の前で 隣にいる父と共に緊張でうつむいていたら 突如桜の花びらと共に 強い風が私の背を押すように吹いた。 その風の中に 懐かしい声が聞こえた気がして 私は思わず風の元をたどるように振り返った。 「……お母さん?」 視界に入るのは 大きな満開の桜の木だけで 人の気配はない。 それでもその大きな幹に寄り添うように 誰かがこちらに向かって 微笑んでいるような気がした。
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