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病院側は荒井が嘘でも前立腺の検査をしてほしいと頼めばしない訳にはいかない。
医師は渋々承諾した。結果は前立腺癌だった。
既に他方に転移して手の付けようがなかった。末期の症状だった。
「私も驚いたわ、衝撃的だった。それからはね、
忍ちゃんや若い子が世話をしても無反応、完全に生気がなくなったわ、
知るのと知らないのでこんなに変わってしまうなんて、やっぱり精神よね、
で、私に最後の頼みを聞いてくれってすがってきたの」
みつばが話始めた。
荒井は一代で事業を成し遂げた男だった。
事業には凄まじい生存競争がある、
事業を存続、成長させるためには手段を選ばなかった。
荒井は同じ会社の部下も信用してなかった。恐らく家族に対してもそうだろう、
そんな中、唯一荒井が心を許す者が愛犬だった。
案の定、荒井が入院すると家族は彼の愛犬を処分した。
正確に言うと捨てた、屋敷から追い出したのだ。
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