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「それはよく分かってありがたいんだけど、ここから抜け出したい気持ちもあるんだけど、
私なんか行く所も帰る所も無いから・・・」
民子はうろたえた。
「民さん、よかったら俺の田舎へ来ないか、尤も親類に会う気はないけどさ、
こんなとこよりずっと住みやすくて静かに暮らせると思うんだ」
福田の思いは故郷に飛んでいた。
「福田さんに甘えてそうさしてもらいます、何だか涙が出てきちゃった」
泣きながら頭を下げる民子だった。
荒井のとんでもない事件以降、荒井は容態が悪化し、
数週間後に死亡した。
富と権力を武器に生きた男だったが誰も施設に来る者はいなかった。
数人の会社の者が事務手続きに来ただけだった。
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