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夏休みを迎えた夜の街は、学生たちでにぎわっていた。
見回りの補導員たちの目をかいくぐり、若者達は今日も自由に遊んでいる。
「ねぇ~桃山女学院の噂、聞いたー?」
「知ってる、お金でもみ消したみたいだけど~」
「しかも、『あの人』が関係してるんだもんねー」
大人びた姿で、楽しそうに女子達が話す。
「JAGUARの話聞いたか?」
「すげーよな!?日本1の半グレのトップをやめさせたんだろう!?」
「はあ?蛇の目のことじゃねぇの?」
「ばか!半グレ1位の座を捨てるぐらい、幡随院長政は『あの人』にベタ惚れしたらしいぜ!」
「SHIELDからも、そのカリスマで可児良信を引き抜かれてよぉ~」
「爆裂弾の円城寺大河も、高千穂カンナ達もなぁ~」
「マジですげーよ!」
熱に浮かされた目で、ささやき合う男子達。
「「「『あの人』は・・・・・・【凛道蓮】って何者!?」」」
龍星軍4代目総長・凛道蓮。
伝説の暴走族を受け継いだ男は、謎に包まれた少年。
悪名高い蛇の目を消滅させ、日本の半グレの頂点にあったJAGUARのリーダーを支配下においた男。
その絶対的な強さに反する見た目は、敵に回った者しかわからない確かな恐怖を与える。
『ジャック・フロスト』の異名に相応しい、愛らしくも恐ろしい人物。
「って、噂になってるぞ、凛?」
「僕は普通のブラコンです!」
「あはははは!総長もつけろよ?ブラコン総長~?」
後日、瑞希お兄ちゃんから聞かされた自分の話にガックリくる。
良いことと言えば、本日も瑞希お兄ちゃんの部屋で2人きりということぐらい。
イスではないテーブルに直(じか)に座り、職場で教えてもらった内容を復習している瑞希お兄ちゃん。
その背中に持たれながら、夏の新作コーヒーメニューを眺めている私。
涼しい部屋の中、背中越しで伝わる体温はなぜか心地いい。
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