鬼龍の詩

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和ノ国のとある城下町、そのはずれで、武士であろう少年二人による喧嘩が巻き起こる。 その喧噪をそばの蕎麦屋で聞いていた一人の青年が、二人の間に割って入る。 「さあさあ、どうして喧嘩などしているんだ?んん?」 青年が少年達に尋ねると、背の高い細身の少年の方がそれにこたえて言った。 「相撲の勝負に勝った方に負けた方が銀貨一枚を渡す約束を交わしたのですが、こいつめ、渡さないのです」 「それは、お前がずるをしたからだ。そうでなければ、この体格差でお前が勝てるわけがない」 そう言うもう一人の少年は、なるほど、いかつく筋肉質な体をしている。 「ふうむ、そうか」 そう言ってしばしあごをなでるようにした青年は、これみよがしに袂から金貨を一枚とりだして見せ、握った手のなかに隠す。 「この手の中には何がある?最初に言い当てた方を君たちが行った勝負の勝者としよう。逆に、言い当てられなかった方には残念賞としてこの手の中にあるものをやろう。どうだ?」 「……」 これには少年二人もだまりこむ。
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