第 2 章  出会い

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思いも寄らない誘いに平常心でいられなくなった。 愚かにも、その次の何かを期待した。 ドラマチックな展開が起こることを。 ところが、そんなことは全く起こらなかった。 ただ、静かに肩を並べて歩いただけ。 見頃の桜を観賞しながら。 お互いに名乗りもしなかった。 相手の勤務先の会社名を知ってるだけ。 その次があると漠然と思った。 あれが最後と分かっていたら、絶対に彼の名前を訊いていたのに。 あのあと、何回も何十回もそう思った。 やがて、冷静に考えた。 向こうはその先のことなど、露ほども思っていなくて、桜見物を誰かとしたかっただけなんだ。 
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