第 3 章  桜堤で   

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今……私の記憶から消えた人物が復活しようとしている。 確実にその顔が、その人本人と分かるまで……。 相手もこちらを認識するまで……。 距離が縮まり、盗み見るかのように相手を窺う。 顔がはっきりしてくる。 やはり、彼本人だ! 彼はのんびりと川を見ながら歩いてる。 私と分かったら、どんな態度をとるかしら? ここで、会うなんて。 何だかとても決まりが悪い。 咄嗟に、物陰に隠れることは不可能だ。 知らん顔をして通り過ぎよう。 桜を見物しているふうを装って。 一年も前のこと。  
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