第 3 章  桜堤で   

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『こんにちは』だけで良いわね。 余計なことは言わない方が良い。 馬鹿みたい。 この距離では、通常の声では届かない。 会釈だけしよう。 数回役所で見かけ、会話らしい会話もせず、桜並木の遊歩道を歩いただけの間柄。 それなのに、頭の片隅で可笑しな想像をする。 もし、万が一、彼が私を憶えていて……。 彼の方から話しかけてきたら……。 そうしてきたら、きっとこれから彼と新しい関係が始まるサインなんだ。 何らその根拠もないのに、そう思い込もうとする自分に興奮していた。 
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