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「あなたはだぁれ? 夢の世界の人?」
「えっとそうだな、どうかな」
「ふふっ、よくわかんないけど私ここでパパとママを待ってるの、どこにも一緒に行けないよ?」
預けていた背を桜の木から離し、困ったように見える笑みを向ける。
そのどれもが可愛らしくて、こうなんて言うのか、胸のあたりが熱くて痛くなってくる。
「いや、どこにも連れて行かない、その、なんだ……にぶんのいち? せいじんしき? おめでとう」
「え? くれるの?」
「あぁ、やる」
「でも知らない人からは」
「私は怪しい人間じゃない、国王になる男だ」
それでもやっぱり困ったように受け取るのを躊躇う少女は、周囲を見回し、それ以上話さなくなってしまった。
そんなに怪しいのか?
それともこんなものじゃ満足しないのか?
私までもが困ってしまって、ただただ目の前をいくつもの桜が舞い、時間だけが過ぎていく。
ひらひらと幾多もの桜が足元へ舞い落ちたとき、やっと少女が口を開いてくれた。
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