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小さな手に嵌めた牛革のドライブグローブをギュッと鳴らし、少女がステアリング上部を握り直してアクセルを床一杯に踏み込んだ。
ファイアー・バード同様、インペリアルも猛スピードで突進してくる。
少女はステアリングを細かく揺すり、衝突面は何処が良いかを宙空で探る。
その数秒後・・・
激しい衝突音が轟く。
コントロールを失った少女は、車体に身を任せるのみ。
ファイアー・バードの車内で見たのは、折れ曲がったボンネット。
そのボンネットに、インペリアルの車体がめり込んでいる。
フロントガラスは無惨に粉々となり、自身の身体に突き刺さる。
ステアリングから血塗れの少女の手が離れ、意識が遠退く。
救助の声さえも、段々と聴こえなくなっていった。
しかし少女には、この声だけは聴こえていた。
若い男の声だ。
「お前の負けだ」
・・・それからは、何も覚えていない。
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