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少女は今、一台の自動車に乗り、小さな手で握ったステアリングを操舵している。
右と左の概念が無い中で、左旋回を続けて逃げ惑う。
焦る少女の履くグローブの中の手は既にベタつき、握っている感覚は皆無に等しい。
この車には何故かバックミラーが付いていない。
サイドミラーどころかフロントガラス以外、窓という窓が取り払われている。
彼女は周囲を忙しなく見回しながら、車を走行させなければならない。
後退する車。
突進する車。
追尾する車。
少女から逃げる車。
全てのモノに気を配らなければ、周りの車との衝突は免れない。
更に彼女は、自身の乗った車を他車にぶつけなければならない状況下にも置かれていた。
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