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「ブランデーを入れたかったんだけど無くて・・・お酒が家になかったの。オレンジピールも入れたかったんだけど無くて・・・。何か代わりになる物をと思ったら、目の前にオレンジの香りの食器用洗剤があったのね。それを入れたの」
その言葉を聞いて、俺は迷わず吐き捨てた。
「おまえ、これは嫌がらせ用のチョコなのか!?」
彼女は少しの間、ビックリして口を開けたままポカンとしていたけど、やがて、また泣き出した。
「それ、本当にそう思うの・・・?」
彼女がまるで本当に分かっていないような口調で、あまりにも哀しそうに泣くから、俺は面食らった。
「いや・・・だって、それ自分で味見できたか?食器用洗剤なんか、普段食うか?そもそも食えないどころか毒みたいな物をチョコレートに入れるなんて、嫌がらせ以外のなにものでもないだろう?」
思わず真剣に諭してしまったけど、ああ、もしかして俺がからかわれているだけなのかも知れない、なんて気持ちになった。
「だって・・・食器用なんだから、口に入っても無害じゃないの?」
彼女は泣きじゃくりながら一生懸命話し続けた。
「・・・その人がね、『おまえが俺を嫌いなのはわかった』って冷たく言い放ったの。自分が私を好きじゃないくせに、そんな言い方で突き放すのは最低だって思ったんだけど・・・」
「ああ、それは本当にキミに嫌われていると思ったんだろうね」
「やっぱり私、死ぬしかない!」
泣きながらフェンスに駆け寄る彼女を必死に止めて、何とかなだめて思い留まらせた。
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