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《コイツ――――今まで笑いを堪えていた? まさか、殴られている最中も?》
その不気味さに、俺はジリジリとすり足で後ずさりをすると、裂けているのかと思うくらいに口角を上げ、真っ赤な舌でヌメリと唇を舐めた。
「キエェェーーーーケケケケケッ」
奇妙な叫び声と共に、いきなり蛙のように飛び上がった源田は、俺の手から服を奪い、あっという間に倉庫の外へと駆けて行った。
「偽善者め」
俺の横を通り過ぎる時、耳元で低く呟いた一言。
そして、その時の彼の血走った目が、これから不吉なことが起こるであろうことを予感させ、足元から徐々に上半身へと泡だっていくのを感じながら、その場に立ち尽くしたのだった。
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