第一話 モブの人生の方が平和である

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 「ならない」と答えた私にその誰かは「そう」と言ってふらふらどこかに歩いて行った。 そして一か月たった今でもその誰かは見ていないし、私の日常も何も変わっていない。 きっとあれは夢かなんかだったのだと思うのもしょうがないだろう。 そして今学校ではある男の子と女の子が有名である。 いきなりなんだと思うかもしれないけど、その二人はなんと魔法が使えるというのである。 たしか速水さんと朝倉さんだったか、その二人は街で起こる問題を解決していっている。 問題といっても世間的には大きいものではなく、おこなっていることもなくなったものを探したり、どこかのおうちの元気のなくなった植物を元気にしたというレベルらしいが。 しかしこの二人が有名になった問題は大きいものだった。 この街にはお金持ちの大きな豪邸があるのだが、それが家事になった時、二人が水を操って火を消したらしい。 そこから二人は有名になった。 みんなどうやって水を操ったとか炎を怖がらずにそんなことをするなんてすごいなんて二人をほめていた。 私も気になったが、そのことよりも気になったのが火をつけた犯人がまだ捕まっていないということだ。 つまり放火魔はまだこの街にいるのだ。 けれど周りの学生たちは二人に夢中だ、大人たちですらそっちのほうにむかっている。 魔法が使えるなら、犯人をさっさと見つければいいのに。 犯人にとって二人は恨みの相手だろう。だって、せっかく火をつけたのに消されたのだから。 こんな思考回路をするなんて推理小説の読みすぎだろうか。 私はなんにもその二人に言わず自分の日々を過ごした。 「ネェ」 七月になった最初のころ、再びその誰かはあらわれた。アイスを買いに行った帰りだった。 フードの下から赤い光がのぞいている。。口元はニンマリと笑っている。 気味が悪いというより現実離れしている。アイスが溶けそうだなんて思う、私も微妙に現実離れした思考回路しているが。 関わったら最後、嫌な予感しかしない。 しかしなぜか私の手元を見つめている。 私の手元にあるのはパプコ、二本入りのあれである。 謎の話をしていたかと思えば、人のアイスをじっとみる。完全にどこかおかしい。 私はその視線に耐え切れなくなって、パプコを一つ渡した。
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