第1章

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 少年は密漁者でした。竜のタマゴは高く売れます。  白亜の雲を切って泳ぐスワローシップの客室の中で、少年は背中のリュックにはいっている竜のタマゴがいくらで売れるか考えていました。  竜から盗んできたタマゴは、一抱えほどある薄っすらと緑がかかった殻がとても硬い大きなタマゴです。これを村のバイヤーに渡せば、しばらく生きていけるお金が手にはいるはずです。  少年には親がいません。小さい頃にフライトウェアーの墜落事故で亡くなったとだけ聞いていました。  村には家がありますが、少年一人にはとても広くて寂しい暗い家です。いつか少年は冒険者になると決めていました。村を飛び出して、世界を旅してみたいと夢に見ていました。きっと素敵な冒険ができるはずと思いながら、村の退屈な暮らしに飽きていた少年はいつも頭の中で世界を空想するのでした。  少年はリュックを膝の上に置きました。竜は昔に比べて減ったそうです。竜は綺麗な水と風が吹く場所にしか住めません。昔は竜が空を自由に飛ぶ姿をよく見ることができたそうです。しかし、今では竜は静かに黄昏の時期を迎えています。竜はとても優しく頭のいい生き物です。中には喋ることができる竜もいます。
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