第1章

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 少女は脇目も振らず竜のタマゴに向かって走ります。 「おい!」  少年は慌てて叫びました。タマゴが鉄柵の隙間から落ちようとして、少女が手を伸ばしたからです。少女は身を乗り出して竜のタマゴを捕まえました。少年は少女の両足をつかんでいました。  見ていた周りの大人が大慌てで少年と少女を助けます。 「ふぅ……」  一息ついてから少年は強く言います。 「危ないだろ。落ちたらどうするんだ」  竜のタマゴなどまた盗んでくればいいのです。少年は少女を心配しました。 「ごめんなさい……でもその竜のタマゴから感じたの」  少年には少女がなにを言っているかわかりません。 「感じた?」 「命が躍動する力を感じたの……」  少年は不思議そうに少女を見ました。竜のタマゴは無事のようです。少年は少女から竜のタマゴを返してもらいました。 「ん?」  少年は気づきました。竜のタマゴが音を立てます。
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