109人が本棚に入れています
本棚に追加
「親はどうしたの?」
ウィルの言葉にサヤは口をつぐみました。
「いないの……」
サヤとウィルはどうやら同じ一人のようです。
「そうか。故郷は?」
「帰れない……」
「ふ~ん……」
その話を聞くことをウィルはやめました。きっとサヤにも事情があるのでしょう。暗い表情になるサヤを見てウィルは思いました。
「一人で旅って楽しい?」
「あまり……だって寂しいから」
「そうか~オレも親がいないんだ」
「まぁ」
サヤもウィルの言葉に驚きました。
「クピ?」
竜の子供は、リュックの中から顔を出してウィルとサヤを交互に見ました。
「あなたも親から離れてるわね」
サヤはリュックごと竜の子供を抱き締めます。竜のタマゴを盗んできたウィルは、そのことをサヤに言わないようにしようと思いました。
「そうだ! 名前って言えば、この子にもつけてあげなくちゃ!」
「クー?」
竜の子供は不思議そうな目をします。
「こいつに名前かぁ」
ウィルは考えました。竜のタマゴから子供が孵ることなど思ってもみかったことです。でも、名前は必要だと思いました。これから一緒に暮らすことになるのですから。
「ねぇねぇ、わたしがこの子に名前をつけていい?」
「いいよ」
最初のコメントを投稿しよう!