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いつもなら悠の言葉に「そこが素敵なんだよー!」なんて返すのにもかかわらず、由紀はちらりと見てすぐに顔をそらしてしまった。
(こんなに由紀はくっついてきたっけ?)
悠は由紀にくっつかれながらそう考える。
(でも、もしかしたら事件のことで不安になってるのかもしれない)
悠はその疑問を振り払った。もし怖がっているならその疑問を由紀にいうわけにはいかない。そう感じたのだ。
だが、悠はここで聞いておくべきだった。
【なぜ、そんなにくっついてくるの?】とでも。
疑問を持ちながらも、不安に感じながらも悠は放課後まで過ごした。
今日は一緒に帰ろうと声をかけようと由紀を見ると、由紀は友達に囲まれていた。もしかしたら今日はあの子たちと帰るのかなと悠は考え、声をかけようか悩んだところで、ふと思い出す。
借りた本の返却日が今日であったことを。
携帯だけポケットに入れて悠は教室を出た。もしかしたら由紀は友達と話しているだけかもしれない。鞄があったらまだ学校にいることもわかるだろう。そう考えて。
その後ろ姿を由紀がじっと見ていただなんて、悠は知る由もなかった。
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「あー・・・一人になんねぇかな」
一人の青年が、とあるクラスの窓のからとある女子生徒を見ていた。
「うーん・・・最悪誰か見ててもやるしかないかぁ?」
腰につけた鈍色に光るそれに触れながら青年はニンマリと笑う。
「やらなきゃだめかぁ・・・・」
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