栄光

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栄光

金の穂から液を抽出し、煮詰め、粉状にする… 苦心の末、私はから体組織の再生薬を作ることに成功し、神話にちなんで"穂綿"と名付けた。 穂綿は、少し患部に振りかければどんな傷もたちどころに癒す、魔法の薬であった。 子どもの火傷がすっかり癒えると、両親は涙を流して喜んだ。 嬉しかった。 私は、この成果をもっと人助けに役立てたいと考え、治療例を病院のホームページに掲載した。 すると。 大勢の人がこの山奥の医院を訪れるようになった。 その中には、とんでもない相談をしにくる人もいた。 すなわち、贅肉をとりたい、もっと美しくなりたい、といった美容整形の類いだ。しかも彼らは、そのためならばいくら対価を支払っても惜しくはないと言う。 勿論それは穂綿の再生力をもってすれば可能だった。 スタイルであれば余分な贅肉を切除し、顔面であれば、醜いパーツを美しく整形してから、穂綿でもって必要な組織を戻せばいい。 私は迷った。 なぜならばそれは、先の子どもとは違って必然ではない、寧ろ余分な手術だ。 だがどうだろう。 私は今一度思い直した。 話を聞いてみると、彼らは実に切実で、自殺しかねない雰囲気すらある。 これは、私が例の親子にしたのと、何ら変わらぬ人助けではないのか。 悩んだ末、私はそれを引き受ることにした。 医院には、忽ち人が殺到した。 しかし、ここで新たな問題が。 穂綿は株が少なく、薬の生産量には限りがある。 私は、医院の裏にハウスをつくり、金の蒲の栽培を試みた。 すると、まるで天が私に味方しているように、それは易々成功した。 気がつけば病院はすっかり有名になり、寒村の開業医に過ぎなかった私に、テレビの出演依頼まで来るようになった。
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