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縦に19、横にも19の線。
この線によって作られた交点に、白と黒のシンプルな丸く平たい碁石を置いていく。
碁を打つ時は基本は無言。
碁盤に碁石を打つ音だけが、部屋中を静かに占領していた。
「…明後日、だっけ?」
碁を打つ時は、基本は無言。
そのルールがたまらなく好きだったのに。
それは私だけじゃなく、目の前の対局相手も同じだと思っていた。
無視するのも憚られたから、手短に頷いておく。
相手はそうかとだけ呟いて、白の碁石を私の急所へ躊躇いなく打ちこむ。
身体中の筋肉が固まって、さっと血の気が引いたのを、何処か冷静な頭で感じた。
しまったと思った時にはもう遅い。
右辺に伸びた私の石たちは陣地を確保するという役目を果たせず、敢え無く死んでしまった。
ここで少し深呼吸。
まだ対局は終わっていない。
きっとチャンスはまた必ず巡ってくるだろうから。
それまで間違えないように対処しさえすれば、勝機はある。
一人心でそう言い聞かせ、曲がっていた背筋をしゅっと伸ばした。
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